先日放送終了したダーリン・イン・ザ・フランキスの感想です。
このまえ前半について記事書きましたが、後半に入ってかなり方向性が変化したので改めて書き直しです。
ネットでは賛否両論になってしまったけど僕は文句はあるけど非難するわけではないですよ。
ネタバレを含むので未視聴の人は注意。
僕はアニメはあんまり、というかぜんぜん見ないやつでそもそもテレビさえ持ってない。そのくせCSの有料放送を契約していて、見ることはほとんどないけど、ネットで話題になったりしたときにネタに付いていけないとつまんないので取り合えず録画はしてるという変なやつです。見るのはせいぜい年に2、3本くらいかな。
で、先日終了したダーリン・イン・ザ・フランキス、当初はネットの掲示板で「搭乗姿勢が完全にセ〇クス」とかネタにされていわゆる色モノ扱いだったし見る予定は全くなかったんだけど、GW連休前にamazonのランキングで急上昇してツイッターのトレンドにも出てきたので気になってちょっと1話を見てみたわけです。僕にとって今年初アニメでした。
過去のいろんなアニメのオマージュと見られる演出や設定が多く盛り込まれていて、根本の流れとしては王道と言ってもいいくらいの展開。
一言でいうと
傑作ではないが続きが気になるアニメ
だった。
設定の穴をなんらかの伏線と深読みして考察する人たちもいたけれど、
『月刊少女野崎くん』第6巻より
まさにこれ。
これは勢いと雰囲気を楽しむアニメだった。
肩張らずに気楽に視聴すれば、後半の怒涛の展開も雰囲気を楽しみながらついていける。かもしれない。
そもそもダーリン・イン・ザ・フランキスとは?
高いエネルギー効率をもつ「マグマ燃料」の採掘によって地殻変動や環境破壊が進んだ世界。荒廃した地上で生き抜くため、人類は巨大移動要塞都市を建造し、その中で生活していたが、謎の巨大生物叫竜が出現し、平和を脅かしていた。これに対抗するため、天才科学者集団「APE」はフランクスという男女二人乗りの巨大兵器を開発。そのパイロットであるパラサイトとするためだけに、名前ももたないコドモ達を育成していた。
Wikipediaより
TRIGGERはキルラキルやSAO、A-1 Picturesはあの花や俺妹、SAOなどどちらも話題になった作品を手掛けているので、これはもしかして今年のアニメ10選くらいにはエントリーできる作品になるやも、という期待はちょっとあった。
かいつまんで説明すると、
世界背景にはエヴァのように謎や神話をモチーフとするキーワードや設定が散見でき、それらバックボーンの上に、思春期の少年たちの心の移り変わりが描かれていく青春恋愛群像劇が乗っかる。
最初はSF × ロボット × 謎 × ラブストーリーがこのアニメのプロットだと感じた。
何気なく登場する用語がけっこう重要な意味を持っていたりするし、謎や伏線っぽいのが垣間見えることが多く、このところ考察勢が喜ぶようなアニメに乏しかったのもあってそういった側面でも過熱した。
落ちこぼれた主人公が偶然特別なロボットに乗り込むことに――。
この流れ、古典と言ってもいいほど王道中の王道でガンダムやエヴァを彷彿とさせる。
男女ペアでロボットを操縦と聞いてパッと思い出したのが
これ。我ながら古い。古すぎる。
たしかWOWOWか何かでやってたんですよね。見逃した回がけっこうあるのでCSで再放送でもしてくんないかな。ストーリーもほとんど覚えてないし。
あと
これも古い。原作のゲームをプレイした人には世界観の掘り下げが物足りないし、アニメしかしらない人には登場人物が唐突に死亡してそれが他のメンバーのトラウマになるでもなくストーリーが進んでいくなど、世間的にはあんまり評判が芳しくないというかまぁ佳作といったところ。
けど個人的にはけっこう好きだった。搭乗人物の心象描写が丁寧で、ロボットアニメというよりは青春群像劇なアニメ。
ペアでロボットを操縦するとか主人公たちは少年兵で一部隊にすぎないだとか監督役というか先生として男女の大人がいるとか青春ラブストーリーだとか、何かとダリフラに共通する点がある。
ダリフラがオマージュとしているアニメの一つにガンパレがあるんじゃないかと思う。 ゲームは大好きだった。よく刺された。
中古にプレミアがついて1万円以上になってしまい、定価で買ったのを処分せずにだいじに持っていたがVCか何かで復刻したみたいであっという間に値崩れした。
青春パートは
青って毎回敗北するね。
15話までのプロットは秀逸
序盤から中盤にかけてはけっこうゆっくりというかもどかしいまでのグダグダしたストーリー展開で退屈する人もいたはず。たしかにちょっと尺を使いすぎていた。
ただ13話からの展開はすごく惹き込まれ、これがこのアニメのメインプロットであり、ここから話を膨らませたんだろうなと思うほど、この13~15話のために費やされている描写が秀逸。
14話より
振り向いたときすでに泣いている。
泣きながらヒロの首に手を掛けていたというのがうかがえる描写。
次のカットでは
歩みが遅くなっている。
平静で毅然としているように見えて、心残りを思わせる。こういった丁寧な心理描写が多くある。
急展開の後半戦
後半に入っていきなり新たな敵が出てきてしまった。
この唐突な展開に非難が集中したのも無理はない。
ここまでの牛歩のごとく進まなかったメインストーリーが突如ジェットコースターのごとく揺さぶられてしまったので、設定がどうとか伏線がどうとかそんな考察がまったく無意味になるほどの力押し急展開。
前半は「あの夏」や「あの花」のような恋愛群像劇、後半は「グレンラガン」か「トップをねらえ!2」になった。
前半の丁寧な人物描写に惹かれた視聴者にとってこの展開はキツかったと思う。
かくいう僕も13~14話の展開がすごく好きで3回くらい見返していたので、20話で実は真の敵が宇宙にいましたみたいな展開にくじけそうになった。
だってこれといってそういう伏線も明確に示されていなかったし、当事者の叫竜の姫が人語も解せる知能を持ちながらたいして重要な役目も果たせずチョイ役みたいに退場していくし。
僕は最初、パパと呼ばれる連中は人類を管理している人工知能か何かで、叫竜は古代文明の生体兵器とかでそれがマグマ燃料の採掘によって暴走しているという設定で、パパを消滅させて叫竜サイドとの決着をつけるというのが大まかな流れという無難なストーリーだと思っていた。
そこへいきなり割り込んできた宇宙人との宇宙戦争。
広げた風呂敷をくしゃくしゃに畳んでしまったという雑さをどうしても感じてしまう。
SFというのは設定が秀逸であれば舞台装置として機能し、舞台のデキが良ければ役者の演技が多少頼りなくても舞台に立たせておくだけで勝手に大筋のストーリーは回っていくものと思う。
この舞台が二転三転してしまうと中に放り込まれた役者はただ振り回されるだけで、結果として舞台の描写も役者の演技もちぐはぐで噛み合わなくなってしまう。
車輪とかロックナットとか、叫竜のデザインが完全に人工物を思わせる。
気になったこととか
作中には多くのキーワードが登場した。
他のサイトでも意味の解説がなされているので、ここでは個人的に気になったものを挙げるのみにしておき、世界観などで気になる点も併せて書き留めます。
フランキス
タイトルにもなっているのに作中に出てこない言葉。作中のはフランクスだ。フランクスを複数形にしてXに置き換えただけ?
6話タイトルは作品タイトルかと思いきやよく見るとダーリン・イン・ザ・フランクス。何か意図があるように思えるが。
そもそもフランクスっていうのも意味が解らない。英語のfrankなら「素直」という意味。関係なさそう。
フランス語でfranc(フランスフラン。ユーロの前のフランスの法定通貨)か?
だとすると複数形はfrancsで成り立つ。こちらは古い意味に「自由」というのがある。
花と北欧神話に関する用語
ほとんどの用語が花に関する用語になっていますね。
プランテーションやガーデン、ピスティルにステイメン、主人公たちが乗るロボットもすべて花の名前。ミストルテインとはヤドリギのことで、北欧神話で光の神バルドルを殺した矢はヤドリギだった。バルドルを失った世界はラグナロク(終末)を迎えるわけだが、このバルドルが所有していた船の名前がダリフラにも登場したフリングホルニ。
世界観の背景に北欧神話があると思われる。
第1話より
ゼロツーのイメージカラーは桜かな。後半OPは多くのカットで桜が舞っている。
13都市の名前はセラスス。これは桜のこと。
ラストも桜で終わった。
7話の違和感
海がある。
とてもじゃないけど都市は海を内包できるサイズに見えない。だとするとこの荒廃した世界にあれほどの海が残っているということなのか?
けど1話冒頭でゼロツーが13都市に海はないのかと尋ねている。ということは海を内包する都市もあるということに?
7話では見上げた空にプランテーションのドーム天井は見えないので、これは都市の外だというのがわかる。そしてオリオン座が「昔、冬の星座代表と言われてた」とヒロが発言から、季節が現代とは変わっているか、温暖化が激しく進んだと推測できる。でも雪が降る場面もありますね。じゃあやっぱり現代とは季節の流れが異なっているみたい。
そして住居跡。あの文明レベルは明らかに現代と同じ。それが極めて良好な保存状態になっている。人が住まなくなった住居は数十年で朽ち果てるというのに、物語の世界はそんなに遠い未来じゃないのか?せいぜい50年程度?
この短期間で季節が変動するということは、地軸でも傾いたのか。
ちなみに舞台となっている地域は日本の関東のあたりという考察が出ており、ほぼ確定と思われる地形(霞ヶ浦)が出ている。
最終形態が完全にバージンロードを進むウエディングドレスの花嫁。
ブーケは爆弾だけど。
パイロットスーツも白無垢の角隠しみたいなデザインだった。
途中で中断してしまった結婚式の続きがまさかこんな形で。
ダリフラとは何だったのか
結論から言ってしまうと
過去の名作アニメの断片を繋ぎ合わせてテンプレートに組み上げたようなアニメ
だと感じた。オマージュというよりはコラージュに達している。
「あの夏」や「あの花」、「グレンラガン」であったり「トップをねらえ!2」など、他にも多くの過去アニメのエッセンスを盛り込んでいる。
こういう脚本って、アニメやゲームの専門学校のシナリオ作成マニュアルにあるような、用意されたテンプレートにパーツを組み合わせて作る作業となった手法のように見える。
むしろ15話あたりのデキだけがひときわ異質で、他のエピソードは15話への無難な繫ぎに過ぎなかった。ゼロツーとヒロの過去エピソードを描くための冗長な演出だったように思える。
クソ!
とは言わないけど
ちゃんと全プロット決めてからやったほうがいいと思うんですよ。
この錦織って監督、グレンラガンやあの夏、キルラキルにとらドラ!も手掛けてるんですよね。言われてみればたしかにそれらのエッセンスが垣間見える。
あくまで叫竜との対立と決着を描き切って、間延びしていた尺を13話くらいに収めていたらかなり評価が変わってきたんじゃないか。ノルマのようになっていたロボ戦闘も削ろうと思えばかなり削れる場面があったと思う。
ゼロツーが叫竜の血を引いているという設定は、叫竜との懸け橋となるべく存在しているキャラクターだと誰もが最初から思っていたはず。その重要な設定が、次々に投入される新設定にかき消されてしまっていったのはなんとももったいないなと感じた。
根幹に重要な設定があるのに、物語の流れを変えてしまう新設定を次々に投入するのはストーリーがブレっブレになるので望ましくないと思う。
ただすべての設定が、ヒロとゼロツー、ミツルとココロの二つのカップルの成長と行く末を描き切るために用意された舞台であって、物語の焦点はロボやSF要素ではなくやっぱり青春群像劇なんだなって思うと、このアニメは最終的にうまくまとまったと思えてくる。
転生エンドは賛否あるだろうけど。
SF要素を排除して学園ものとか部活ものとか無人島ものなどの閉じた小規模な社会を舞台にして、まったく同じストーリーで別のアニメができそうなくらい。
オマージュ元のエヴァなんかは作品タイトルの通りエヴァそのものに謎があり焦点が向けられていたけど、ダリフラでは作品タイトルにカブらせているのに「フランクス別に無くてもいいんじゃ・・・」という感じだった。舞台はSFだったけど焦点がSFじゃなかった感じがする。
食事にハチミツぶちまけるほどの甘党でいつもキャンディーを咥えてるのはこの時の思い出のせいか。
自傷行為といい、記憶消去にあらがって忘れないようにしているのかも。
この表情がいちばん好きです。
ところでこの回想シーンの導入時、ゼロツーが自分のことを「私は」と言っていた。ずっと一人称が「ボク」だったのでこれを聞いたときけっこう違和感があった。何を意図したものなのかは結局わからず仕舞いだったけど、何らかの意図は必ず含まれていたはず。
この作品がオマージュとしている「あの夏」や「あの花」、「グレンラガン」であったり「トップをねらえ!2」や「エヴァ」などを見ていない人がこのアニメを見ると、けっこう評価が違ってくるんじゃないかなとは思う。
全話視聴するにはちょっと話数が多いけど、再編集して3時間くらいの劇場版になれば、後半の怒涛の展開も違和感なく見れるくらいに前半のテンポもよくなると思う。
個人的なてきとう評価
ストーリー(導入):4
ストーリー(前半):3
ストーリー(中盤):5
ストーリー(後半):2
キャラデザ:5
キャラクター:3
作画:3
声優:4
人物の作画は良かったけどロボや叫竜の作画が安定しなかった。
こんなにもロボ要素がオマケみたいなロボアニメも珍しい。